iPhoneの「マップ」(Apple Maps)とGoogle マップは、どちらも数多くのユーザーに使われている地図サービスです。

iPhoneの「マップ」とGoogle マップを研究しているjustinobeirne.comでは、iPhoneの「マップ」利用者は全世界で2億人から6億人と推測しています。また、GoogleはGoogle マップの月間利用者(MAU)を10億人以上としています。

iPhoneの「マップ」とGoogle マップはどちらも地図検索やルート案内などの機能を搭載していますが、iPhoneの「マップ」ではストリートビューに類似した機能として「Look Around」、Google Earthに類似した機能として「Flyover」などが提供されています。

2つの地図サービスの違いを知っておくことは、地図サービスを活用したローカルマーケティングを実施する際に役立ちます。

今回の記事では、iPhoneの「マップ」とGoogle マップの違いを徹底比較します。

iPhoneの「マップ」とは

iPhoneの「マップ」ことApple Mapsは、Appleが提供している地図サービスです。iPhoneでは「マップ」という名称で、端末に標準搭載されています。

2012年から提供されており、iPhone以外にもiPad, iPod touch, Apple Watch, MacなどのApple製デバイスで利用できます。

StatCounterが2021年7月に発表した資料によると、日本のスマートフォン市場におけるiOSデバイスが占める割合は約68.6%となっています。

また、TesTee Labが2018年9月に発表した調査によると、地図アプリを利用している回答者のうちGoogle マップを利用している回答者は77.5%、iPhoneの「マップ」を利用している回答者は40.3%でした。

iPhoneの「マップ」とGoogle マップの使用者数の割合▲iPhoneの「マップ」とGoogle マップの使用者数の割合:TesTee Labより、編集部作成

中でも10代の利用率が最も高く、地図アプリを利用している回答者のうち男性では50.7%、女性では48.6%の回答者がiPhoneの「マップ」を利用していることがわかりました。

この数字は2018年時点のものであるため参考程度に留めておく必要がありますが、iPhoneユーザーの一部はGoogle マップではなく、iPhoneの「マップ」を利用していることがわかります。

<参考>
StatCounter:Mobile Operating System Market Share Japan
TesTee Lab:地図アプリに関するNPS調査【iPhoneユーザー4,219名対象】

過去には不具合が話題となるも、2020年には大型アップデートがリリース

初代iPhoneが発売されたのは2007年ですが、当時のiOS(当時の名称はiPhone OS)が搭載していた「マップ」はGoogle マップの地図情報を用いていました。

その後、2012年にiOS 6が公開され、この時に「マップ」が独自の地図情報を用いるものに更新されました。

しかし、公開当初は店舗や施設、道路などの位置情報や名称に間違いが多く、更には実在しない施設が地図上に出現するなどの不具合があり物議を醸しました。

特に「パチンコガンダム駅」や「餃子の王将駅」などが地図上に表示されたことは多くの日本人ユーザーの間で話題となりました。

このような不具合は世界中で発生したため、AppleのCEOを努めるティム・クック氏はApple公式サイトに謝罪文を掲載し、不具合が改善するまでの間はGoogle マップなどほかの地図サービスを使うようユーザーに案内するなど、Appleとしては異例となる措置が採られました。

翌年公開されたiOS 7よりiPhoneの「マップ」は徐々に改善を重ね、現在ではGoogle マップと地図サービス市場を奪い合うほどの実用性を備えています。

iOS15では更に機能が強化、3DマップやARナビが登場

2021年9月27日に発表されたアップデートでは、3DマップやAR技術を活用したナビゲーション機能が追加されました。

WWDC 2021で発表された3Dマップ▲WWDC 2021で発表された3Dマップ:Appleより

最も大きな変更点としては、マップが3Dになったことです。これにより地形や道路、ランドマークなどが立体的に表示されるようになったほか、複雑なインターチェンジも視覚的にわかりやすく把握できるようになります。

また、公共交通機関のルート案内を利用する際、駅の出口にてiPhoneで周囲の建物をスキャンすると正確な現在地が検出され、画面上にAR(拡張現実)を用いたルート案内が表示されるようになりました。

ARナビでは、カメラで記録した周囲の景色の上に進む方向を示す矢印や通りの名前などが表示されます。

そのほかにも、Apple Watchと連携し、ルート案内の際、降車が近づくと、装着しているApple Watchから通知される機能も新たに加わっています。

こうした機能は、2022年1月現在、ロンドン、ロサンゼルスなどの一部地域のみの対応となっています。

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<参照>

Apple Newsroom:Apple Maps introduces new ways to explore major cities in 3D

Googleマップとは

Google マップは、Googleが提供している地図サービスです。Web版とアプリ版が存在し、PC、タブレット、スマートフォンなどの幅広い端末でOSを問わず利用できます。

Google マップは2005年から提供されており、Googleによると現在の月間利用者(MAU)は10億人以上とのことです。

iPhoneの「マップ」と同じくナビゲーション機能を備えているほか、3Dモデルの地図を探索できる「Google Earth」や店舗や施設の情報を登録できる「Google マイビジネス」などの機能が存在します。

機能更新も活発、Google I/O 2021では5つの新機能が追加

Google マップの機能更新は比較的頻繁に実施されており、ほぼ毎月新たな機能が追加されています。

5月19日に開催されたGoogle I/O 2021では、地図やルート案内に関する5つの新機能が発表されました。

Google I/O 2021で発表された新しいライブビュー

▲Google I/O 2021で発表された新しいライブビュー:Google The Keywordより

また、直近では8月3日、iOS版Google マップにウィジェット、ダークモード、iMessageでの現在地の共有の3機能が追加されています。

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iPhoneの「マップ」とGoogleマップ、4つの違い

iPhoneの「マップ」とGoogle マップには、類似した機能が数多く存在します。

ここでは、その中からLook Aroundとストリートビュー、FlyoverとGoogle Earth、評価と口コミ、Apple Maps ConnectとGoogle マイビジネスについて紹介します。

1. Look Aroundとストリートビュー

iPhoneの「マップ」の「Look Around」と、Google マップの「ストリートビュー」は、どちらも道路沿いの風景を見渡せる機能です。

Look Aroundとストリートビュー

▲Look Aroundとストリートビュー:編集部作成

まるでその場所にいるかのような臨場感が味わえるほか、行き先の店舗や施設の外観を事前に知りたいときにも有効活用できます。

Look Aroundは2019年に公開されましたが、ストリートビューは12年早い2007年に公開されています。

Look Aroundは2022年1月時点では仙台、東京、横浜、相模原、名古屋、大阪、金沢、広島、福岡、高松のみの対応となっています。一方、ストリートビューは国内ほぼ全ての公道に対応しています。

Look Aroundの対応する地域は拡大しつつあり、2022年2月1日から11月30日にかけて一部地域での画像収集作業が予定されています。

操作性の面では、Look Aroundは地図との同時表示と全画面表示のどちらにも対応していますが、ストリートビューは全画面表示のみとなっています。

また、Look Aroundでは移動したい地点をタップして移動しますが、ストリートビューでは移動したい地点をダブルタップするか画面に表示される線をなぞって移動します。

ほかにも、Look Aroundには画面上に方位磁針が表示され、タップすると北を向く機能が搭載されており、ストリートビューには方位磁針アイコンをタップするとスマートフォンの角速度センサーを用いてスマートフォンを向けた方向を見渡せる機能が搭載されています。

2. FlyoverとGoogle Earth

iPhoneの「マップ」の「Flyover」と、Google マップの「Google Earth」は、どちらも3D化された地図を上空から眺められる機能です。

FlyoverとGoogle Earth▲FlyoverとGoogle Earth:編集部作成

Flyoverは2012年の新「マップ」アプリと同時に公開されましたが、Google Earthは11年早い2001年に公開されています。

Flyoverは2022年1月時点で353地域、国内では東京、名古屋、大阪などをはじめとする39地域に対応しています。一方、Google Earthは日本全国に対応しています。

Flyoverには都市の観光名所を上空から見て回る「Flyoverツアー」という機能が搭載されており、Google Earthには自然や文化、教育などのテーマごとに世界中の名所を上空から見て回る「Voyager」という機能が搭載されています。

なお、FlyoverはiPhoneの「マップ」から利用できますが、Google Earthを利用するには別途アプリのダウンロードが必要です。

3. 評価とクチコミ

iPhoneの「マップ」の「評価」と、Google マップの「クチコミ」は、どちらも店舗や施設への口コミを閲覧、書き込みできる機能です。

iPhoneの「マップ」とGoogle マップの口コミ一覧

▲iPhoneの「マップ」とGoogle マップの口コミ一覧:編集部作成

iPhoneの「マップ」における「評価」では、FoursquareやYelp、じゃらんnet、食べログなどから口コミを取得して地図上に表示しています。

また、2021年4月より一部の店舗や施設に評価や写真を投稿できるようになり、一部店舗でレビューが確認されています。

公式からの発表はないものの、将来、iPhoneの「マップ」独自の口コミ機能を整備するための準備だと思われます。

一方、Google マップにおける「クチコミ」では、Google マップのユーザーが投稿した口コミを掲載しています。ユーザーは地図上の店舗や施設を5段階で評価し、文章や写真と共に口コミを投稿できます。

Google マップには口コミを要素ごとに絞り込んだり、投稿日順や高、低評価順で並べ替える機能などが備わっています。

また、Google マップでは口コミなどを積極的に投稿するユーザーを「ローカルガイド」として認定し特典を付与するなど、さまざまな手段を用いて口コミの活性化に努めています。

4. Apple Maps ConnectとGoogleマイビジネス

Apple Maps ConnectGoogle マイビジネスは、どちらも事業者が店舗や施設の情報を地図上に登録できるサービスです。

iPhoneの「マップ」とGoogle マップの事業者情報▲iPhoneの「マップ」とGoogle マップの事業者情報:編集部作成

Apple Maps ConnectはiPhoneの「マップ」に、Google マイビジネスはGoogle マップに、それぞれ情報を登録できます。

Apple Maps ConnectとGoogle マイビジネスの機能の違いについては、以下の表をご覧ください。

Apple Maps ConnectとGoogleマイビジネスの機能比較▲Apple Maps ConnectとGoogleマイビジネスの機能比較:編集部作成

このように、Apple Maps Connectでは基本的な情報のみが登録できますが、Google マイビジネスではSNSのように投稿を作成したり、ビジネスプロフィールのアクセス数などを分析する機能が備わっています。

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iPhoneの「マップ」向けローカルSEOで知っておきたいこと

iPhoneの「マップ」やGoogle マップなどの地図サービスにおいて、自らの店舗や施設が検索結果の上位に表示されるような対策を「ローカルSEO(またはMEO)」と呼びます。

ローカルSEOは主にGoogle マップに向けて実施されていますが、国内にはiPhoneの「マップ」を利用するユーザーも数多く存在するため、iPhoneの「マップ」に向けたローカルSEOも無視できないものとなっています。

ここからは、iPhoneの「マップ」においてローカルSEOを実施する上で気をつけておきたいポイントを紹介します。

1. iPhoneの「マップ」には各口コミサービスの口コミが表示される

iPhoneの「マップ」には、Booking.com, Foursquare, Yelp, じゃらん、食べログ、トリップアドバイザーなどの口コミが表示されます。

そのため、各口コミサービスに店舗や施設が登録されていないと口コミが表示されず、ユーザーに店舗や施設の様子が伝わりづらくなってしまいます。

iPhoneの「マップ」の機能をフル活用するには、自社の業種に合わせた口コミサービスにあらかじめ登録しておくことがおすすめです。

なお、先述の通り、2021年4月よりiPhoneの「マップ」でもユーザーが評価と写真を投稿できるようになりました。

現在は一部店舗でしか評価の公開は確認されていませんが、Google マップの「クチコミ」機能のような形の口コミプラットフォームが形成される可能性があります。

そのため、今後はiPhoneの「マップ」でも口コミの管理や返信などの対応が必要となる可能性を意識しておくとよいでしょう。

2. Google マイビジネスとの併用を

先述した通り、iPhoneの「マップ」に情報を登録するにはApple Maps Connectが利用できます。

しかし、Apple Maps Connectから登録できる情報の種類は現時点ではGoogle マイビジネスと比べて少なく、基本的な情報だけを登録できる形となっています。

Google マップは地図サービスの中では最大となるユーザー数を持っており、国内でも相当数のユーザーがGoogle マップを日常的に利用しています。

そのため、Apple Maps Connectと同時にGoogle マイビジネスにも登録すれば、より多くのスユーザーに自社の店舗や施設を見てもらえる可能性が高まります。

ローカルSEOを実施する際にはiPhoneの「マップ」とGoogle マップの両方を意識し、Apple MapsとGoogle マイビジネスの双方を活用するとよいでしょう。

iPhoneユーザー向けのローカルSEOにはApple Maps Connectも活用しよう

iPhoneの「マップ」には定期的に新機能が追加されており、今日では日常利用に差し支えのないほどの地図サービスとなりました。

ユーザーが店舗や施設の評価を投稿できるようになるなど、口コミ周りの機能も向上を図っていることがわかります。

ローカルSEOではGoogle マップやGoogle マイビジネスが重視されがちですが、iPhoneの「マップ」やApple Maps Connectに向けたローカルSEOも同時に実施することで、より多くのユーザーに自社の店舗や施設を見てもらえることにつながります。

今後、iPhoneの「マップ」は口コミプラットフォームとしての側面も持つようになる可能性があります。

iPhoneユーザー向けのローカルSEOにはApple Maps Connectも活用し、ローカルSEOを盤石のものとしましょう。

<参考>
justinobeirne.com:How Many People Use Google Maps Compared to Apple Maps?
Google Maps for iPhone:Google Maps Metrics and Infographics